私は産まれてからの30年間虫歯になったことがなかったのですが、とうとう虫歯になってしまいました。長年虫歯、口の衛生について無頓着であり、知識もつけようとしなかった結果だと思っております。虫歯になったのは上左右の親知らずであったため、抜くだけの数回で終わらせてしまい、疑問点を歯科医に質問する機会を逸してしまった内容がありますので、以下の質問に回答いただければ幸いです。 1)私の場合は、口の中の菌の生態バランス的に、虫歯菌の数が多くなり、その多さで安定してきてしまっているということになるのでしょうか?多くなってきているとしたら、逆に虫歯菌の数を減らすように、菌の生態バランスをコントロールする手段はあるのでしょうか? 2)実は、虫歯なのかなと気になる歯があります。それは、奥歯でその真ん中の溝の部分にわずかに黒く見える気がします。(変なたとえかもしれませんが、非常にとがった鉛筆の芯の先が歯の溝にかすってついた、程度の黒さです....。日によっては黒くみえない気すらします...)たとえ僅かな状態といえど、自然になおるということはやはりあり得ないのでしょうか? 3)また、表面的、目視的には進行が進んでないように見えても(黒く見えなくても)、歯の内部では進行しているという場合はあるのでしょうか? 4)虫歯の進行の時間的早さは一般的に言ってどれぐらいなのでしょうか? |
>1)私の場合は、口の中の菌の生態バランス的に、虫歯菌の数が多くなり、その多さで安定してきてしまっているということになるのでしょうか? 虫歯は虫歯菌の感染により発症します。虫歯菌の数(病原菌の存在と、その量)、感染ルート(口腔内環境や、食生活、歯の状況、歯の手入れ方法)、宿主側の免疫力(歯の自体の抵抗性や、免疫力など)が、大きく関連します。 もちろん、口腔内は、体中で、最も細菌の種類も数も多いところです。腸管内の約10倍です。 (唾液1グラムと、うんち1グラムでは唾液のほうが細菌数の種類も数も約10倍多い。唾液の方が、うんちより細菌学的には汚染している) 口腔内は、様々な細菌の種類と数によってバランスが保たれています。これをフローラ(細菌叢)と呼びます。 虫歯になりやすいということは、もちろんこれらの細菌の数的種類的バランスが悪いことや、虫歯菌の増殖や定着に適した口腔内環境があることが関係します。 このバランスの崩れは、口腔内の状態、食生活や生活の不規則、食生活の嗜好性の変化、歯磨き習慣によっても変化しますし、老化や、基礎疾患の有無など、口腔内免疫力の低下など、宿主側の要因にも左右されます。 > 多くなってきているとしたら、逆に虫歯菌の数を減らすように、菌の生態バランスをコントロールする手段はあるのでしょうか? 人為的に行うことは可能です。いわゆるプラークコントロールもその1つです。 歯周病菌は、集合して、取り除くことができるプラーク(歯垢)を形成しますが、やがては、磨き残しができて、もはや歯磨きでは取り除くことのできない歯石に変化します。 歯石は莫大な、歯周病菌や虫歯菌などの菌の集合体ですから、結果として、無症状のままに口腔内環境は悪化します。つまり、細菌学的に不良な環境になってくる。(口腔内pHの変化や、善玉菌が使える酸素の不足など、また菌同士の縄張りの変化など) これを阻止する為に、歯石になる前にプラーク(歯垢)を、自分で取り除き、定期的に取り残した物を専門的に除去してもらう方法で、歯石にさせないように、人為的に歯垢(プラーク)をコントローしていくことです。 プラークコントロールは歯磨きだけでは、不可能であることを認識してください。しかも、無症状に悪化していきますので、正しい知識が必要です。どんなに、歯磨きの達人でも、3ヶ月もすると歯石の付着を観察します。 さらに、歯石だけで無く、規則正しい食生活と生活は、口腔内だけで無く体全体の健康維持にとって重要で、年齢と共に衰えて行く老化による免疫力の低下を、なるべく遅くする必要があります。 > 2)実は、虫歯なのかなと気になる歯があります。それは、奥歯でその真ん中の溝の部分にわずかに黒く見える気がします。(変なたとえかもしれませんが、非常にとがった鉛筆の芯の先が歯の溝にかすってついた、程度の黒さです....。日によっては黒くみえない気すらします...)たとえ僅かな状態といえど、自然になおるということはやはりあり得ないのでしょうか? 虫歯は、虫歯菌の定着による感染ですから、定着して感染を起こしている限りは、自然治癒はありえません。 しかし、目で見えないような小さな感染は、その都度、唾液中の修復作用により修復されています。 小さな虫歯は、早期のうちは、豊かな健康な唾液により修復されているのです。唾液には、口腔内環境を常に良い状態にする働きや殺菌作用、修復作用があります。 その意味では、本来的に自然治癒能力があるのですが、それ上回る、口腔内環境の劣化をもたらす、食文化と習慣があるため、、自然寿命に逆らってなおかつ老後を豊かな質の高い生活を得ようとすれば、人為的な予防が必要になるでしょう。 たとえば、炭酸飲料を飲むと、口腔内のpHが下がって、元に戻るまで、この唾液の修復作用は働かなくなります。 > 3)また、表面的、目視的には進行が進んでないように見えても(黒く見えなくても)、歯の内部では進行しているという場合はあるのでしょうか? これは、先ほどの、説明で理解できると思いますが、一度定着してしまった虫歯菌は、そこで増殖を繰り返す為に、かってになくなることはありません。また増殖スピードは天文学的スピードで内部に病巣を広げて行きます。 歯の表面はエナメル質でなかなか破壊されず、気がつかないことが多いです。 それに引き換え、エナメル質の下にある象牙質は、虫歯菌に対して簡単に破壊を受け、象牙質に虫歯菌が定着すると病巣の拡大は早いです。 小さなエナメル質のピンホールのような破壊から、大きく内部(象牙質)破壊しているケースも多く見受けられます。 4)虫歯の進行の時間的早さは一般的に言ってどれぐらいなのでしょうか? 誰にでも、共通していることは、時間により比例して虫歯は進行します。 ただ進行スピードは人により全く異なります。 歯自体が本質的に持っている抵抗性や、唾液の量と質、年齢、食生活や生活習慣、口腔内の手入れの状況により、人それぞれに条件が異なる為です。 |