私は現在41才の女性です。
小学生の頃の体験から、極度の「歯科恐怖症」で以来まともに診てもらう事も出来ずに困り果てていました。あるきっかけで歯科医を紹介してくれる会社を知りそこからの紹介である歯科に通う事となりました。(小学校の検診医でもあります)私の事情を理解してくれ、とても親切な先生です。 で、相談なのですが、治療は1998年 7月より98年11月までその後は出来上がった「差し歯」の調整が未だに続いています。(正確には、この1月より行ってません)私の歯の状態は、下の歯は右左共4,5(健康な歯を削り)6,7(抜いて)8(金属の土台)でブリッチ。右1,2左1,(自分の歯を土台に差し歯)上の歯は右1,2,7(金属の土台)3.(健康な歯を削り)4,5,6(抜いて)、左は1,3(健康な歯を削り)その他は右と同じ状態で、これが一連の差し歯になっています。何十回と調整をしても、様々な不定愁訴、歯の付け根と歯茎の間の隙間、(見た目にも明らか、中からいやな匂い)噛み合わせ、なにも変わらない(どんどん悪化!)のです。 何度も直すうちに歯にひび、付け足した部分も色が違い、歯全体も始めのオーダーとは全く違う色です。この間頭痛、めまい、吐き気、喉のつまり、肩、首の凝りなど、歯のせいとは思いもつかず、何度も病院へ行きましたが異状なしです。まわりの勧めもあり、3件ほど他の歯科に行ってみました。(昨年11月〜12月) 答はどこも同じでまず根の治療が不完全、差し歯も全く合ってなく、噛み合わせもだめ!根の治療については、終了時にレントゲンにて確認をと2度言いましたが、心配ないと撮ってくれませんでした。そして私は精神的にも肉体的にも疲れてしまい、この1月に思い切ってこの歯科医に、相談してみました。 結果初めは一切返金は出来ないとのことでしたが、話を進めるうちもう一度作り直して納得出来ない時は、上の歯だけの料金の半分を返すとのこととなりました。 しかし、基本的な治療にも疑問を持ってしまったている事と、上の歯が合っていないと言う事ばかりで、下の歯との噛み合わせを全く考えていないのでは?との不安から、まず、取り敢えず根の治療だけは任せられないと思い、主人の急な短期海外転勤と言う事にして、今は、他の歯科にて根の治療をしてます。 その歯科医は日本に戻ったら作り直すと言ってます。上、下合わせて約110万です。上は56万で左右共1−3がエステニアクラウンとかで1本5万でした。 ある所ではゼンソウ冠?では?とも言われました。 1,法的に、または何らか他の方法で、治療費を取り戻す可能性があるのでしょうか? 2,現在の状態では私のお口の中は、原型をとどめていません。治療を始める前に取った「歯形」を返してもらえるのでしょうか?(噛み合わせの正しい情報を次の医師へ伝える参考にしたいのです) 上手く伝えられたか解りませんが、本当に疲れ果てています。その上また、大きな費用が、かかること、、、 どうぞ、なんらかのアドバイスお願い致します。 |
これは、おそらく、しばしば歯科治療後に起こる顎関節痛機能異常症候群または Costen症候群と思われます。 今回のように、全顎的な規模で補綴を行った時に、生理的な噛み合わせが著しく狂ってしまい。様々な不定愁訴を訴えるもので、実際に頭痛や肩こりのみならず、めまいなど様々な症状を呈します。 たくさんの症状が出るために症候群に定義され 顎関節痛機能異常症候群(temporomandibular pain and dysfunction syndrome)もしくは、筋・筋膜機能異常症候群(myofascial pain dysfunction syndrome、Costen症候群 )であることが考えられます。 これは、生理的な噛みあわせの不備により、頚椎にまで負担をかけ頚椎筋群・および、脊椎起立筋群、さらには咀嚼筋群の起止部や停止部にストレスがかかる為に頭部や全身症状が出ます。 さらには、これらのストレスが心理的ストレスを産み出し長期化します。ひどい場合は精神的トラブルに発展することもあります。 Costen syndrome(Costen症候群 )の場合は、顎関節部の疼痛とともに,難聴,耳鳴,耳閉塞感,耳痛,めまい,咽頭痛,舌・鼻の灼熱感などを呈する症候群です。 側頭下顎関節の咬合不全により顎関節骨頭の後上方への移動により,耳介側頭神経,鼓索神経が刺激され,これらの症状が起こるとされています。 噛みあわせの低さが原因と考えられています。 こような現象はどうして起こるのかというと、診療室では、人為的に噛み合わせを調整することが一般的です。(患者さんに噛んで貰い調整する)。 しかし、実際の噛み合せは、人為的な噛み合わせとずれていて、無意識な習慣的生理的噛み合わせが人為的噛みあわせと異なっていることが多いのです。 全体的噛み合せを判断する事は、とても高度な知識が必要となり、臨床的生理咬合を無視した噛み合わせ調整は、時にこのような障害を発生させます。 一度、こような状態になると、同時にに顎関節症を併発することが多く、修復がとても難しくなり、噛み合せに詳しい専門家の診断と治療が必要になります。 >1,法的に、または何らか他の方法で、治療費を取り戻す可能性があるのでしょうか? 法的には、このようなケースでは難しいと思います。 一般に審美歯科のトラブルや、入れ歯のトラブル、インプラントのトラブルでは、民法632条以下に規程される請負契約があったものと判断されます。 これは、歯医者が仕事を完成することを約束し、患者がその仕事の結果に対して報酬を支払うという契約です。 しかし、今回のようなケースでは民法656条に定められる準委任契約とみなされる可能性が大きいです。 準委任契約では、歯医者の仕事の完成を持って、請求権が発生するのではなくて、委ねられた治療行為を処理していく努力に対して報酬請求権が発生します。 つまり、その歯医者は、発生したトラブルに対して、再治療や補綴物のやりかえを提案し努力しようとしているからで、それを、あなた側が虚偽の理由をつけ拒否しているのというふうに解釈されるでしょう。 したがって、訴えは多くの場合棄却されます。 しかし、訴訟の方法によっては裁判官が民法632条による、請負契約と判断してくれれば治療費を取り戻せるかもしれませんが、可能性はきわめて低いです。 歯科医はその点に関しては努力をし、治療費の一部返還を提案するなど努力しているからです。 裁判を起こす事は得策ではありません。適当なところで示談したほうが有利でしょう。 >2,現在の状態では私のお口の中は、原型をとどめていません。治療を始める前に取った「歯形」を返してもらえるのでしょうか? それは、無理です。診療に関する模型やレントゲン等の個人情報は、歯科医院から持ち出す事自体が法律で禁止されているからです。 但し裁判所の命令がある場合はその限りではありません。どうしても、あなたがその必要性があるなら証拠保全手続きを裁判所に申請しなければなりません。 そうでない限り、持ち出せば、持ち出した人が罰せられます。 ただ、あなたは診療室においては見る事ができます。しかし、たとえ、あなたの歯型であったとしても、診療室外への持ち出しはできません。 また、あなた以外の第3者が、それを見たりすることは守秘義務違反によりできません。 ついでながら、他の先生が前医の治療ミスについて指摘したとしても、また、客観的にあなたの現在の症状が、その歯医者の補綴による結果のCosten症候群 であるとしても、それを法的に証明するとなると、きわめて困難です。 それを、証明し鑑定し、かつ証言できる歯科医がいないからです。 あなたは独自に鑑定し裁判所において証言する歯科医を探さねばならないでしょう。 そのような行為は、仲間を売るような行為で、明日から飯の食い上げになるので、現在は私の知る限りそんな歯科医はいません。 今後、歯科医でありかつ弁護士でもある人材が出てくれば可能性はありますが。 医科の分野では、すでにそのような弁護士は存在します。 逆に裁判において、歯科医に有利に鑑定する歯科医はいっぱいいますが・・・ そういう意味で、歯科に関する法曹会の準備は患者にとっては、ほど遠い現実があります。 |