本田先生、はじめまして。
このたびはとある人のリンクでこちらのHPに たどりつきました。

顎関節症についても非常に詳しく説明されてあったので もしよければ教えていただけないでしょうか?

私は20代前半、の女性です。いわゆる出っ歯を治すために 矯正専門医院で矯正治療を始め、現在約4カ月です。

以前ある矯正歯科 で相談に行ったとき、顎関節症であることを告げられました。
その医院は かなり噛み合せや顎関節症に力を入れている医院のようでしたが、費用 などから結局その医院ではなく、他院で治療を受けています。

しかし、現在 通っている医院は顎機能検査などは全くなく、治療面でもおそらく、全く 顎機能や顎関節の動きを考えずに歯だけを見て治療しているようです。

このところ、虫歯治療のため一般歯科医院に行ったところ、再び顎関節症 であることを告げられました。しかも、顎の開き具合が悪い、そして前方 移動も制限されているのようなことを言われました。

また、このところ痛み なども出てきてます。そこで、先日別の矯正歯科に相談にいったのですが (経緯はおいておきます)、そのやり方で治療してもおそらくでっぱった感じ は残るだろうし、顎関節の動きを全く無視しているので顎関節症はさらに 悪化するだろう。

少なくとも矯正治療でよくなることはないと言われました。 だとすると現在の医院で治療を続けることは、歯並びがきれいになること も完全には満たされず、また顎関節症は治るどころか悪化させてしまう ことになるわけですよね。

顎関節症の治療は大学病院などで受けることが できるけど噛み合せと関連しているのであれば、おそらく矯正治療をやり なおす、もしくはそれに近いようなことになるのではないでしょうか?

とすると、顎関節症を視野に入れている医院に転院するか、あるいは 口腔外科などに通いながら現在の医院で矯正治療を続けるかというような ことになると思うのですが、転院することは可能なのでしょうか?

また 仮に転院もしくは現在の医院での治療を中止する際、円満に解決する にはどうしたらよいのでしょう?

顎関節症が悪化してること、そして今の まま治療をすすめると余計に顎関節を痛めてしまうこから転院したいと 先生に伝えてもいいのでしょうか?

それにその場合の費用も気になります。

どうしたらいいのか教えていただけませんか?よろしくお願いします。

困ったときにいろんな人に相談を求めると、混乱を招いたり、何が、いいのか分からなくなったりします。

特に、それが、健康に関することであったり、金銭が絡んでくると、往々にして、自分に都合の良い回答だけに頼りがちで、それぞれの、相談者の言い分の、都合のいいところだけを受け入れてしまいます。

これは、医療相談を受けるときや、受診中には大きな障害となるケースがあります。

まず、矯正治療で、もっとも難しいケースは、いわゆる「出っ歯」の矯正と、顎関節症があるケースです。

貴方は、この両方が考えられるわけで、歯科医師からすると、いわゆる難症例であることが想像できます。

このようなケースでは、じっくりと経過を見ながら、動向を見て、治療方針も修正しながら、行われます。

その結果、両方とも、完璧に治せないこともあります。(もちろん、今よりは、改善されると思いますが)。

場合によっては、最大限の限界的妥協を目標にすることもありえるでしょう。(出っ歯は、この辺まで治し、顎関節異常はこの辺まで、治せるとか...でも、それぞれは、完全ではない。一方を満たすと、他方が悪くなる場合もあります)

貴方は、ここに、メール相談するまでに、3軒の歯医者さんにかかっていて、さらに転院しようかと考えていらっしゃるようですが、この状態を続けていくと、いくつもいくつも転院を繰り返し、系統的治療が困難になる可能性があります。

さて、個々の項目に、答えていきます。

>「現在かよっている矯正専門医院は、どうも顎関節の動きを全く考慮しない矯正を行っているようです。」

通常、矯正認定医は、矯正を行う際に顎関節の動きを考えるのは必須です。それは、確認されたでしょうか?

>現在通っている医院は顎機能検査などは全くなく

通常、学術的研究レベルでは、使うかもしれませんが、日常診療では、特に必要としません。

> 「最近、虫歯治療のため一般歯科に行ったところ、〜顎関節症も治るどころか、さらに痛めてしまうといわれ」

それは、一般歯科医の意見であり、矯正医は、一般歯科医が判断する以上に判断できるから認定医なんです。

>顎関節症が悪化してること、そして今のまま治療をすすめると余計に顎関節を痛めてしまうこから転院したいと先生に伝えてもいいのでしょうか?

それは、確かな、歯科医学的根拠を持って、悪化していることを証明する必要がありますし、治療途中において一時的に自覚症状として、そのようなことが現れるケースもあります。その辺の判断は、専門家の確かな判断が必要になります。


結論です。

矯正治療や、顎関節治療は往往にして、治療経過は、長期に及びます。

しかも、高度な専門的技術と知識が必要となりますし、治療成果を観察しながらの、計画治療が必要となります。

したがって、信頼の置ける先生を決めると、じっくりと、話し合われ、腰を据えた治療を受けられることをお勧めします。

特に顎関節症では心理的要因も大きく作用します。

転院をしては、いけない理由として、そのような難症例では、うまくいかなかった場合、責任の所在がはっきりしないこと。

長期的系統的治療計画が立て難いこと。

転院のたびに、同じだけ、場合によっては更に、費用がかかり、経済的損失が多いこと。

転院を繰り返してくる患者は、ドクターサイドに警戒感を強く抱かせてしまい、ドクターサイドからの人間的信頼関係の構築が難しいことがあります。患者も歯科医を選びますが、こういう場合は、歯科医も患者を選ぶ場合もあるのです。
高額の治療費をもらう場合責任がありますから、なるべく、リスクを抱えることを嫌います。

したがって、患者にとっては、不利益なことが多いです。

今、不安を、抱えていらっしゃるのに冷たい厳しいことを言ったかもしれませんが、老婆心ながらの意見と御承知ください。
あくまでも、こういう治療は、ドクターとの強い信頼関係があってのものです。


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