母は糖尿病なのですが上下前歯4、5本全てをインプラントにしました。下の歯は調子がいいようなのですが上の歯(インプラント部分)の調子が悪く、よく分からないのですが、インプラントの軸部分が折れていたりすることが続き歯医者へ行く度に結構な金額を支払っているようです。

 糖尿病の人にはインプラントはしない。と後で知り(雑誌で読んだ)とり返しのつかないことになっているのではないかと不安になりました。
 なぜ、糖尿病の人にはインプラントはしないのか、ということと、インプラントが度々外れたり、軸が折れたりすることは異常なことなのかどうなのか教えて欲しいと思います。

ンプラントは御存知のように、金属性のねじのような形状をした人工歯根と呼ばれるものを、歯を失った顎の骨に埋めこみます。
その部分に、ブリッジを作って失った歯を補う構造です。

術式はとても簡単です。しかし、誰でもが治療を受けられるわけでは有りません。

選ばれた患者だけが出来ます。

最も大切なことは、基礎疾患が無いこと(特に糖尿病患者は禁忌です)。
その理由です。

インプラントの最大の欠点は、費用が高いこともさることながら、埋めこみ部分、つまり、埋めこんだ金属部分と、歯肉の境目からの細菌感染です。

細菌感染がおこると、大変なことになります。ひどい場合は骨膜炎を起こしたりします。

古いタイプのインプラントでは感染が起こり、せっかく埋めこんだ人工歯根の周りの骨が溶け出して、ぐらついてきます。

ちょうど、歯周病で歯を失うのと同じ原理です。
しかし、このような場合は、全てを撤去すれば大丈夫です。

不幸なのことは、最近のインプラントの素材が進化してきた為に、ほとんどのタイプが骨と一体化するタイプが使われます。

このような場合、ひとたび感染が発生した場合、インプラントの撤去が非常に難しくなります。なぜなら、インプラントと骨が一体化してしまっているからです。

したがって、インプラントを施す患者さんの、絶対的な条件として、自発的プラークコントロールが、完璧に出来るなど、歯科意識レベル(デンタル IQ)の高いことが必要条件になります。

しかし、元々デンタル IQ の高い人は歯周病で歯を失わないわけで、インプラントを希望される人の大半は、元々のデンタル IQ が低いことが多く、治療前に一緒になって、勉強していただく必要があります。

かつ、インプラント終了後は、感染が起こらないように定期的リコールを実施して、徹底的に医院側で、専門的管理を行なっていく必要があります。(健康な人の場合)

健康な人でも、これぐらいの慎重さが要求されます。

糖尿病患者には、どうしてインプラントは適さないかと言うことですが。
糖尿病自体は、現在内科的にコントールできる成人病ですが。特徴として感染に弱いと言うことがあります。

つまり、ばい菌による感染を受けやすいわけです。したがって、歯周病にもなりやすい。
ちょっと油断する、すぐに、歯周病菌の莫大な塊である歯石を付着させ口腔内の衛生環境を悪化させます。

歯垢(歯石になる前のもの)や歯石はどこに一番付着しやすいでしょうか??

歯と歯の隙間や、歯と歯茎の間ですね。

実は、前述のようにその部分にインプラントの最も弱い部分、つまり体の外部と内部の接点があり、複雑な形態をしたジョイント部分があります。

さらに、人口歯根は、天然の有機物ではなくて金属(異物)ですから、構造上も歯垢が最も付着しやすいです。

歯垢は歯周病菌そのものの集合体です。こういう状態になると、糖尿病を持っていらっしゃると、簡単に感染します。

そうなった場合、簡単にインプラントを撤去できる場合はいいですが、撤去できないケースでは重篤になります。

したがって、糖尿病の人には術後のコントロールが難しいので、行ないません。

インプラントはこのように、歯茎と埋めこんだ部分の境目にがとても、弱い構成になっています。

また、人口歯根は本当の歯根ではありません。まったく別もので、歯根としての働きは、ただ上の構造を支えている土台に過ぎません。

本物の、歯根には、最も歯根として重要な役割を果たす。歯根膜と呼ばれる膜が取り巻いています。

この膜が物を噛むときにクッションの役割と、硬いとか柔らかいとかの感覚をつかさどっていますが、インプラントにはそのような役割はまったくありません。

したがって、思いきり必要以上に噛んだ場合は、通常は痛い筈なのに、痛くありません。

そのために、必要以上にインプラントのジョイント部分に負荷がかかります。
使う材料にもよりますが、ジョイント部分に大きな力がかかるために、設計や材質によっては折れることがあります。

このように、インプラントはすばらしい一面と、危険な一面があります。

インプラントの利点に、動かないこと、よく噛めることがありますが、この特徴は直接的な欠点にもなります。歯根膜が無い為に、痛みをあまり感じません。したがって、感染が起こると簡単な処置で終わることはあまりありません。

インプラントは歯医者側にとっては、全部自費ですので、経営的はとても、メリットがあるために、やりたがる先生は多いです。

例えば、2日間の講習を受けて100万円くらいのキットを買えば、すぐに出来るコースもあれば、100万円以上の費用を払って、講習を1年がかりで受けてトレーニングを重ねて、やっと認定を受けて行なうコースもあります。私も、何種類かの講習を受けました。

インプラントを行なう方も、受ける方も慎重のうえに慎重に取り組むべきであるとおもいます。。

ただ、インターネット上でも派手な宣伝が目立ちます。

十分経験のあるドクターを選ぶ必要があるでしょう。

費用も規模(本数と場所)により数十万円から数百万とまちまちです。メインテナンス費用も必要です。ただ、お金があれば出来るのかと言うと、基礎疾患があったり、予防や手入れの出来そうに無い人は出来ないです。

すばらしい、治療技術である反面、危険も多いわけで、技術的ばらつきもあります。裁判事例も急増しています。

よく理解と納得をした上で、治療を受けてください。

私や、私の家族にならどうするか・・・・今から、30年位してから、考えてみるかもしれません。

でも、その頃は、あの世かも知れませんが。・・・意外にも、まだ、この世にはばかっていて、ニィーと笑うと、全部インプラントだったりして・・・(^Q^)


そうならないように、予防に励んでいます。



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