**県で、薬局と鍼灸院を開設しているものです。今日は、器具の消毒のことについて質問させてください。

以前ある歯医者さんに勤めていた看護婦さんの話しでは、歯の治療をする時のドリル等、口内に直接触れる器具の消毒はしていなかった、ということでした。

昨今では、エイズ、B型肝炎など、感染症に対する不安が高まっています。

先生 の院ではどういう風に対処されているのでしょうか?また、前述の看護婦さんのいっているような歯科医は今でもいるのでしょうか?現在一般的に行われている消毒 はどういったものなのでしょうか?またチェックする方法はありますか?

よろしくお願いいたします。

>以前ある歯医者さんに勤めていた看護婦さんの話しでは、歯の治療をする時のドリル等、口内に直接触れる器具の消毒はしていなかった、ということでした。

医科領域。獣医科領域における一般開業医の感染症に対する対策は、かなり進んでいます。
対患者への院内感染のみならず。従業員への院内感染が深刻な状況にあるからです。
特に、観血的処置の多い外科領域や獣医領域では当然のことであるという認識があります。


歯科は、最も観血的処置の多い、あるいは口腔内や唾液(体液)を直接的扱う領域であるにもかかわらず非常に遅れています。
一つの原因として、歯科は、昔から、技工中心、補綴中心の歴史があります。


医学部や獣医学部では、基礎医学をベースにした臨床教育で常に、全身とのかかわりから専門とする局部の病変について考察する習慣が身についています。

また、多くの疾患が感染症に密接に関連し、常に感染の概念なしに臨床教育は考えられませんが。

歯科では、その点においてはるかに遅れています。そういう意味では、医学部に歯科を組み入れるとか、歯科は、医学部卒業後に教育するシステムにすればいいのですがね。

また、治療においても、歯科医師誕生の頃から、補綴中心のリハビリ的分野(入れ歯とか、さし歯やブリッジ、インプラント)とかには、高収入を上げられるために、格段に進歩しているのですが。口腔内を消化器とした保存的取り組みは、できていません。

虫歯にしても歯周病にしてもすべては、感染症と考えたときに、感染症を阻止して、予防を行なう、というような治療はさほど行なわれなかった経緯があります。最近ようやく、そのような取り組みもなされようとしています。

したがって、感染と言う概念は、非常に立ち遅れているし、体制も整っていないのが現実です。
また、ほとんどの歯科医院は零細で、途中から、感染症対策にのりだそうとしても設備的に限界があったり、ランニングコストがかかるために保険診療主体の歯科医院では、経営を圧迫していく為に進んでいないのが現実です。


>昨今では、エイズ、B型肝炎など、感染症に対する不安が高まっています。先生の院ではどういう風に対処されているのでしょうか?

まず感染症を考える場合に、細菌感染と、ウイルス感染の両方に対するする対応が必要です。
さらに、歯科では、治療器具の特殊性と治療内容の特殊性から、さまざまな対応が必要です。


歯科診療室は労働する側にとっては、とても、危険極まりない環境です。治療器具は、ほとんどが圧縮空気を用いる為に、治療台を中心とした半径1メートル以内は、感染源になる唾液、血液、あるいは、入れ歯に削りかすに付着した細菌やウイルスで汚染しています。それが、空気中に浮遊しています。

したがって、ほんだ歯科では、診療室の空気の流れを制御しています。浮遊する目に見えない、汚染した空気は天井にある特殊な医科用エアーフィルター(三共エアーテック製で、開発に当たり、当院で検査を重ね改良していっています。)によって、ウイルスまでも吸収してクリーンにしてから循環するシステムを装備しています。このシステムの開発には協力してきました。


また、入れ歯などを削るときは、ポータブル型の粉塵吸収装置を導入して、空気中に浮遊しないように工夫しています。

これは、患者さんへの配慮と言うよりも、従業員の院内感染防止が目的です。また、従業員は肝炎ウイルスの予防接種なども義務付けています。ほとんどの、歯科医院で働いている人は肝炎ウイルスの予防接種を受けていないのではないかと重います。
(保険が効かないので、医院側には、とても負担になります)


しかし、これらの費用はメインテナンスも含めかなりかかります。

次に、患者さんに使用する治療器具は、次のようにしています。
最も危険性の高いもの(注射針、麻酔薬、コップ)については、出来る限り、ディスポーザブルを使います。

ディスポーザブルに出来ないもので危険性の高いもの。歯を削るバー(ドリル)や、神経を治療する針のような道具については、使い捨てに出来ないので、一人1日一回使用のみで、使用後は消毒システムに回ります。(1日かけて、消毒にまわします)。したがって、ルーチンに使われる器具については、患者数だけ必要になり、他院の数十倍を用意をしています。

手術用具は、常に消毒済みを非常時に備えストックしています。


個々の消毒方法は、細菌類とウイルスの消毒とは区別して行ないます。

一般にアルコール消毒は全てに対応しているように思われがちですが(一般の方)ほとんど無効です。


細菌に対しては、オートクレーブと呼ばれる蒸気圧による殺菌を行います。この方法では、全ての細菌が死滅します。
水蒸気に弱い器具については、乾熱滅菌を行ないます。さらに熱にも弱いプラスチック製品はガス滅菌で対応します。

ウイルスについては、厚生省の定めるアルデヒド系の消毒剤で対応しています。(グルタール・アルデハイド系)

ただ、どのようなシステムで消毒していくかについては試行錯誤の連続でした。と言うのも、例えばミラーなどは、強い消毒により、曇りが焼きつきすぐにだめになったり、器具のダメージが大きいので、消毒薬はいくつも試して、現在は海外からの輸入品で対応しています。


基本的に、消毒の基本は、直ちに流水で水洗することです。ほとんどの細菌とウイルスは死滅します。但し血液や腐敗した組織はその後よく洗浄後消毒にかけるといいです。

血液の付着したものは、目に見えないたんぱく質が変成して取れなくなることがありますので、十分な水洗が必要です。

治療台は、薄いビニールカバーをかけ、毎回消毒し、日が変わるとその、シートも消毒します。

感染が疑える患者さんが治療した場合は、椅子も含めて、治療台を丸ごと消毒します。(この場合、約30分はその治療台は使用できません)

これは、肝炎対応のスプレー式の消毒薬を使い、治療の装置はジョイント部分から切り離し、個々に消毒しています。


また、その日に、出る治療上の医療廃棄物、血の着いたガーゼや汚物は、別に保管して、その日のうちに専用業者に回収に来させています。

注射針は、専用の箱に保管し、まとめて、専用業者に定期的に回収させてます。


歯医者が、もし、一般のごみにの日に出しているところがあれば、とても危険ですのでさわらないようにしてください。(特に清掃局にお勤めの方は気をつけてください。きわめて危険です。)

>また、前述の看護婦さんのいっているような歯科医は今でもいるのでしょうか?現在一般的に行われている消毒はどういったものなのでしょうか?

よその医院の対応については、分かりません。若い先生の医院では、そういう認識が進んできているので、ある程度対応しているかもしれません。

そこの院長の考え方により、出来ていないとこもあれば、出来ているところもありでどうなんでしょう?少なくとも、10年ほど前に私が治療を受けていた数軒の歯科医院はまったく出来ていませんでした。
今もそこは、営業中ですが、改善されているかどうか分かりません。


>また、チェックする方法はありますか?

一応、次のような基準で判断されればよいと思います。

1.バキュームと呼ばれる口の掃除機の先(チップ)が、つけっぱなしでないか?
着けっぱなしだと、最悪です。

2.注射針は使い捨てか?麻酔は使い捨てか?・・注射針や、麻酔薬の使いまわしがあると、間違いなく感染します。

3.コップは使い捨てか?あるいは、金属性で、消毒されたものか?

4.歯を削るバーは、着けっぱなしでないかどうか。1度使うと、バーには、組織の断片や血液が目に見えないレベルで付着しています。治療後、どのように処理しているか観察する。

5.ドクターや職員は、マスク、ゴム手袋着用しているか。

6.女子職員の化粧はけばくないか?

7.ドクターはケーシーと呼ばれる首まで隠れる白衣を着ているかどうか。時々ネクタイして治療している先生がいたりします。ネクタイの結び目は恐ろしく汚染していると思います。


感染症対策は最近は理髪店や、公衆浴場などには、指導を行なっていますし、研修を行なったりもしていますが、歯科医院は歯科医師の判断で行なう必要があり、行政が一定の感染症対策基準を設けるべきであると思います。丸適マークとかしてくれると、分かりやすい。
と言うのも、このような医院側の努力は患者サイドからは分りにくいからです。

また、患者さんや、医療従事者が歯科診療所に於いて院内感染を受けたとしても感染源を特定しにくい疫学的特徴があります。

したがって、現状では医療関係者や患者さんは、各自が勉強して自分で判断しなければいけないでしょう、

RE: 消毒について

丁寧なご回答、ありがとうございました。
 正直言ってかなり恐い話しですね。コスト等からも考えても、みんながやっているとは考えられませんね。
 私の鍼灸院でも、かなり消毒には気を使っています。
 使用した鍼は、蛋白除去剤につけ、洗浄。アルデヒド系の消毒剤につけた後で、オートクレーブにかけています。ディスポーザブルの鍼もありますが、品質に問題があり、使用していません。

 



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