怪しい新聞社
私が、患者さんだった頃
通っていた歯医者さんに、何新聞だか忘れましたが
その歯医者さんのことが載っている新聞のコラムが待合室に貼ってありました。
「へー、この先生 へぼいと思ってたのに実は、すごいんだ」
...と感心したりしたことがあります。
また、学生の時 某先輩先生(うさん臭いんで、あまり好きではなかったですが)
の待合室にも雑誌の切り抜きだの、新聞記事などのスクラップがいっぱいありました。
その先輩先生に「雑誌に載るなんてすごいですね!」と言うと
「僕とこはね、いつも雑誌社から取材に来るよ。
君たちもね、取材を受けるくらいの歯医者になれよ!」..と激励されました。
ぼくも、いつかこうして記事にしてもらえるように
がんばらねば.....」と、思ったものでした。
開業して半年後のことです。
突然、大手出版会社から電話がかかってきました。
「△△画報の編集部の○○です。実は、弊社では、
明日の医療という特集記事を企画中でして、
多くの読者の皆様の推薦に基づいて記事を書く予定です。
つきましては、インタビュー並びに先生の診療所
を取材させて頂きたいのですが」と言う電話です。
「しかし、できて半年ですが....どうして、うちが選ばれたんですか....」
「明日の医療と言うことで、新規オープンの医療機関を
読者アンケートをもとに全国的に調べて、選ばれました。」
「お金はいらないでしょうね。....」
「これは、あくまでも取材でして、お金は要りません。」
ラッキーですね。開業して僅か半年でマスコミデビューですから。
というわけで...すごく有名な出版社だし、どうぞどうぞ
というかんじで、取材に応じました。
当日は、診療所もいつになく活気に満ちて従業員もルンルンです。
インタビュアーは、だれでも知っている有名人
カメラマンは来るは、照明さんは来るは、
その前に、リハーサルが会って、終わったら
くだんの芸能人と記念撮影やら、サイン会やら
結構、華やいだ雰囲気になり、従業員も院長もすごいんだ!とか
感心してくれたり.....ちょっと嬉しい気分
全てが終わり。原稿の割り振りやどういう写真を載せるとか、打ち合わせ
この時になって今までの祭り騒ぎは
がらがら音を立てて崩れていきます。
つまり、取材は無料である。
掲載する場合は、スペースによって
協力金(賛助金)と言う名目で、ご協力頂きたいと言う。
それがべらぼうに高い!
B5 1ぺーじで70−100万円が相場....
従業員たちは、自分たちが載った写真も載ると言うことで、
楽しみにしてるし.....約束してしまったし....
芸能人もやってきたことだし.......
「お金はかからないと言ったじゃないですか!」
と抗議すると、「取材は、無料ですよ。ただ、掲載をご希望の場合
協力金をお願いするわけです.....」
ここまでくると、さすがに面の皮の厚さでは誰にも負けないつもりの私でも
従業員の手前、断ることもできずしぶしぶ条件を飲むことに
これで、終わりかと思うとまだある。
見本誌は送りますが何部か追加する場合は別料金
これが、50部単位だと言う、一部2000円
えーーー。これだけで、さらに10万円
もうやけくそ。詐欺みたいだと思うけど後の祭り....
従業員に一冊ずつ配ると言ってしまったし
見本誌が送られてきて、さらにびっくり
その雑誌は、某有名雑誌かと思っていたら
よく似た、パチモン雑誌!!名前がすこしちがう
内容は、すべて取材記事、定価も書いてあるが
「こんな雑誌、誰が買うの?という代物」
ちなみに、紀伊国屋書店に聞いてもそんな雑誌知らない
というでは、ありませんか.......
かくして、一般の人が決して読むことのない
雑誌に掲載される羽目に......
しょうがないんで、せめて院内にでもおいて
みてもらおうか.....というわけで
そんなに、いい話は無い訳で、その雑誌を眺めていると
たくさんの歯医者さんや、お医者さん、中小企業
それぞれ、同じ程協力金を払ってるとすると
軽く、1億円以上集めたことになる
ぼろい詐欺ですね
それから、数ヶ月おきに、超一流新聞社をよそおって
同じような電話が、しょっちゅうかかってきます。
で、一度調べてみたことがあります、
新聞社が契約している広告代理店が
企画を立てて、医院にとって都合のいい記事を書く、
医院側は、協力金名および企画料を代理店に払う
代理店は、新聞社や出版社に対し、
広告と言うことで、スペースごと買い取っている
その差額が代理店の取り分となる仕組みです。
中小の新聞社やローカル新聞社では、
新聞社自体で同じシステムで直接やってることもあります。
あるいは、かってに有名雑誌のパチモン(類似品)をつくって
高い金を巻き上げ、関係者だけに配る
という2通りのパターンがあります。
歯医者さんの、名誉欲をくすぐった詐欺まがいの商法ですが
それを宣伝の材料にする先生もいたりして
どっちもどっちです。
この間は、超一流健康雑誌の特集ということでと言う話がありました
代理店から載せたいんで協力お願いします
「取材されるんなら、出演料をいただいているんですが...」
と、もちかけたら、それから なしのつぶてでした。
それでも、怪しい新聞社は
懲りずに忘れた頃にやってこられます。
これって、どっかで聞いたことがあるな...とおもったら。
突然宝石会社からやってくるダイレクトメール
「あなたに、ネオダイヤモンドの原石が当たりました!おめでとうございます。
この引き換え券を持ってお越しください。」
で、行ってみると指輪に加工しますか、ペンダントに加工しますか....
とかいろいろ話に乗ってるうちに、ちゃっかり高い加工費をとられるという
古典的詐欺商法に似ています。
よく、「日本の名医100選」とかの特集は、ほとんどこのようにして
作られています。そういう記事を見たら「金離れのいい迷医100選」
と読み替えるようにしています。
ここからは、戻れません
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