口臭治療上の問題点
「口臭」の問題は実に深刻で、今や、社会的問題になろうとしています。 高度に文明が発達した現代社会において、我々は、常に多くのストレスを受ける生活をしています。 とりわけ、日本人の場合は、極端に進んだ清潔志向が見られ、身の回りの品はほとんどが抗菌グッズ、といえる状況の中で暮らしていますが、これは異常な生活です。 さらに、最近にわかに、「口臭」をはじめとして、「体臭」「腋臭」「鼻臭」など、臭気に対する反応が、過剰なほどに強くなってきています。このことは、しばしば、そのような臭気を持っている人を、社会に適応できなくなるほどに追い詰める、という結果を生んでいます。 しかし、医療界のほうでは、「口臭」への対応はほとんど出来ていないのが実態です。 最近、新しい審美としての「口臭治療」が脚光を浴びつつありますが、簡単な歯周治療を施し、従来の審美歯科への誘導を促す姑息的な治療が氾濫しているだけで、高額の費用をかけても、結局は根本的な解決に至らずに、患者側は不信を募らせるばかりです。 どうして、口臭治療は普及しないのでしょうか? それにはいくつかの、治療上あるいは経営上・システム上の諸問題があるからです。 |
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診断的問題 確立していない治療法 |
「口臭」は、基礎疾患由来の場合を除き、その原因の多くは、口腔内にあります。 さらに、たとえ基礎疾患由来であったとしても、その治療と連動して、口腔内の専門的ケアーは必須になります。 しかし、現在の大学における歯科の教育システムの中に、「口臭」に対する専門的教育や治療体系の指導は、ほとんどありません。 したがって、口臭治療=歯周治療ぐらいしか思いつかないと言う、歯科医師側の、歯科医学的治療レベルの問題があります。 また、体系的な治療法自体が、ほとんど無いというのが実態です。 |
歯科医側の意志の問題 | 歯科医が口臭問題に消極的な理由は、「口臭」治療は、亜流もしくは、出来る限りしたくない、と言う体質があります。 口腔内の問題は本来、口腔全体を守備範囲とする歯科が担当すべきなのですが、日本の歯科は伝統的に「歯」を扱う風潮があります。(特に、一般開業医) 利益に直接反映する被せの治療や、利益効率の良いインプラント治療には大変積極的ですが、直接的営利に反映しにくい[口臭]治療には消極的です。 |
教育上の問題 | 「口臭」治療には、精神科領域、内科領域、耳鼻咽喉科領域、婦人科領域、成人病、など幅広い医学的知識と同時に、広範囲の歯科的知識を必要とします。 にもかかわらず、体系的医科学と連動した臨床訓練が出来ていない現状。 現在「口臭学」という学問体系もなく、指導者がいない実態。 |
治療評価の難しさ | 「口臭」と言うのは、訴えであって、病名ではない。 したがって、その評価を現在、ドクターの主観的官能検査と口臭測定器に依存している。 しかし、口臭が治ったかどうかは、最終的には、患者自身の主観的評価によるために、結果の評価において術者と患者が対立した場合には、患者側の意見は無視される。その結果、患者側には、不満だけが残りやすい。 さらに、口臭は日周期があるため、特定の日に測定したとしても、その結果は測定条件等により変化し、あてにならない。 そういう意味からも、最終的評価は、患者自身の主観的評価となるため、客観的な治癒評価の基準があいまいである。 |
一般開業医側の問題 | 一般開業医が「口臭」治療を、積極的に扱わない理由として
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大学病院の問題 | 実際に担当にあたる歯科医は、行く末「開業医」なり「研究者」なり、それぞれに違う、将来的本来的目的を持っていることが多い。(どうしても、片手間的になる) 在籍期間が限られるために、永続的取り組みが難しい。「口臭」治療専門にやると、他のことが出来なくなる不安がある。 一般歯科医としての本来的修行のほうに、ウエートが置かれる。 「口臭」専門医を目指したとしても、自立が難しい。-保険医としてもっと、やらねばならないことがある。 社会的要請に応じて、設置しているだけに過ぎない。 多くは「予防歯科」「歯周治療科」内に設置され、歯科内部の他科との連動した取り組み姿勢がない、さらに[医科」との連携もない。 |
他科のとりくみ | 内科的には消化器系について検査するのみで、口腔学的知識は皆無に等しい。 内科的治療をしたとしても、その後内科的要因によって生じた口腔学的問題は、歯科にゆだねなければいけない。 |