少し前カナダ・バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学の口臭外来で、臨床教授として活躍する八重垣健先生から国際電話があった。
この、8月20、21の両日、UCLAで開催される第4回国際口臭学会の案内である。興味のある方は日本審美学会のホームページに日程を公示してあるので、アクセスしていただきたい。(http://www.Jdshinbi.net)八重垣健先生は日歯大卒、久留米大学大学院医学研究科を卒後、日歯大新潟歯学部をへてブリティッシュ・コロンビア大学へ着任した。国際的に活躍する先生の存在は、実に頼もしい。
古くから身近にあり、ありふれた存在の口臭に歯科医の目が注がれるようになった。
アメリカの動向は避けて通れないが、学会のテーマの中にも口臭が取り上げられ、もう一つの魅力あるテーマである「歯のホワイトニング」とともに、「口臭治療」は審美歯科の分野でも注目されている。
対人関係を大切にし、キスの習慣もあるアメリカでは、爽やかな息(フレッシュ・ブレス)こそ、見えない審美として重要なパートを担いつつある。
こうした情況を背景に、八重垣先生の海外からの発信が、今日本に届いている。
口臭とはなにか。改めてここで定義すれば「呼吸や会話の際、息が他人にとって不愉快に感じられ、悪習と判断されること」であろうか。
人間は生き物であるから、多少は息が匂っても当然とも言える。脳が静かな住宅地なら、我々の担当する口は活発に休みなく働く工場の役割をしている。
文句一つ言わず、呼吸に、言語に、咀嚼に、休みなく働いている。だから口臭は必然的であり、副次的に出てくるのである。
しかしこの口臭が、人と人のコミュニケーションのなかで、相手に不快感を与えたり、良好な人間関係の障害になることがある。口臭に悩む人がいたら、歯科医師が適切な治療を行なうべきである。
口臭のほとんどの原因は、口の中にある。よく言われる「胃が悪いから口がくさい」という発言は誤りであり、迷信に近い。
歯周病などの原因を除去し、舌にこびりついるプラークを清掃し、効果的な洗口剤を使えば口臭は必ず減少する。
ここで、注意すべきは、全身的疾患に起因する口臭、口臭は認められないのに本人がそれを主張する自臭症、複雑な病状を持つ口臭恐怖症(ハリトホビア)への配慮である。
歯科心身医学、診療歯科を含めて奥は極めて深いが、もっと見なおされるべき分野である。
歯科情報学 松尾通
日本歯科新聞 99.5.18
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