唾液を考える??

もしも・・唾液が無くなったら・・・・・って・・考えたことありますか?想像してみましょう。

しゃべることがまず困難になります。彼氏と彼女達の愛の語らいも、甘いキッスもできないでしょう。

やがて、食事が出来なくります。流動食ばかり流しこまなくてはいけません。

口の中は、いつも、熱くなりヒリヒリしてきます。だんだんとひどくなり、まるで、焼け火箸をくわえている感じです。すごい口の臭いに悩まされ、気がつくとべと〜と、口の中じゅうカビの膜が貼りつき、異様な臭いがします。
無理にはがしてみると・・血がにじみ出てきます。

舌は干からびて、横皺がいっぱい出来てきて、まるで干からびたゴムのようになります。

この状態が長く続くと・・・ついには衰弱して死に至るようになります。

これとよく似た状態は、例えば口腔内に癌が出来て、放射線療法を受けた場合で、そのような時はほとんど唾液が出なくなり、食事などのために特別なケアーをしていかなければなりません。

あるいは、シンナー中毒者や、麻薬中毒者の口腔内は、十分な唾液が出なくなっているため、とても口臭がひどくなり、口腔内はカビだらけになっていきます。

唾液無くして・・私達は生きていくことは出来ないのです。

唾液の成分と口臭の見地からの役割

唾液には、とてもたくさんの成分と役割があります。それをわかりやすく、表にして見ました。
これを見ると、口臭抑制において、唾液が大きなかぎを握っていることがわかります。
ここでは、口臭に関連した唾液の役割に注目して、まとめてみました。

白い部分は口臭抑制に働く作用等を示し、赤い部分は口臭を助長する方向に働く作用等を示しています。

成分 構成 口臭との関わり そのほかの役割
水分
(99.5%) 口臭の抑制効果
  • 口臭原因物質の希釈
  • 口臭原因物質の揮発の防止
  • 口腔内洗浄作用(洗口液の役割)
  • 防湿作用(口腔内の乾燥を防止)

・食物を溶かし咀嚼(噛み砕く)と嚥下(飲みこむ)を容易にする。

・口腔内を湿らし、舌の動きや、粘膜の動きを滑らかにする。

・食物を溶解して味蕾(みらい=味覚細胞)に運び、味を感じさせる。
糖・塩分を溶かして、食欲を増進させ、唾液の分泌を促す。

・食事などに毒物や、異物(水溶性)が混入した時、瞬時に薄める

・体内水分の調節作用・・・体内水分が欠乏すると、唾液の分泌が減って口渇感が生じることにより、水分補給を促す。

・体温の調節機能(人では殆ど退化しているが)。口は気化熱を利用するラジエーターの役割を持ち、唾液は体温を調節するラジエーターオイルの役割
有機成分 アミラーゼ(酵素)
マルターゼ(酵素)
食物残渣を遅延的に発酵し口臭を起こす。
同時に酸を産成する。

消化酵素・・でんぷん質を、デキストリンを経て麦芽糖へと分解する。
血清アルブミン(蛋白質)
血清グロブリン
(蛋白質)
免疫に関与する。口腔内の感染を防ぎ、口臭を抑制する。 口腔内免疫に関与し、からだの抵抗力の源。
唾液に適度な粘り気を与えている。
食物の表面を柔らかくし、食塊を形成し、咀嚼や嚥下を容易にする。
ムチン(蛋白質) 唾液に粘り気を与え、乾燥を防ぐ。料理でのゼラチン、あるいは片栗粉に似たような作用で口臭を抑制する。
リゾチーム(酵素) 抗菌作用を持ち、口腔内の有害な細菌を殺菌し、口臭を抑制する。 口腔内の病原菌を殺菌し、体内への進入を防ぐ
尿素
尿酸
クレアチニン
唾液中にある、また各種細菌の持つウレアーゼ(尿素分解酵素)や、他の窒素分解酵素によって分解を受け、口臭の原因となる窒素含有臭気(アンモニアガスなど)を作り口臭を起こす。 たんぱく質や窒素化合物の代謝過程に関与する。
無機成分 ナトリウム
上記有機成分と共に、オートマチックに作用して恒常性(いつも同じ、口腔内環境であること)の維持に役だっている。
口のなかの pH(酸性・アルカリ性)を、中性に保つ働き。

これによって、口腔内環境を衛生的に保っている。
この働きが乱れると、口臭を起こす。
食欲の増進を促す恒常性の維持

フッ素やカルシウムイオンは、歯の再石灰化に関与する。
カリウム
クロール
炭酸カルシウム
燐酸カルシウム
ロダンカリ
フッ素など微量成分
溶存ガス 炭酸ガス
酸素
窒素など
生理的口臭を引き起こす。
溶存酸素は口臭を抑制する
浮遊物質 唾液小体
剥離粘膜上皮
細菌類
食物残渣
血球などの血液成分
微生物や、唾液中の酵素によって分解され口臭を引き起こす。

唾液から見た口臭予防への鍵

こうしてみてみると、唾液は、口臭の発生と密接な関係のあることがわかります。
したがって、口臭の発生を抑えるためには、口臭ガスの原因となる微生物や、たんぱく質などの「原料」を無くしていく治療と平行して、唾液への対策と治療が必要なことがわかります。

どの本にも、口臭の原因は唾液分泌の不足、あるいは口腔内の乾燥と書いてあります。また、口臭を訴える患者さんも、なんとなく、そのことに気が付いています。

ところが、唾液の成分と、口臭との関わりを考えてみた場合、ただ唾液量が多ければいいのかというと、そうでない事がわかります。

唾液のなかには、口臭抑制に働く因子と、口臭発生を助長する因子が混在しているからです。

この事から、口臭を引き起こす原材料を取り除くこと(口腔衛生環境の整備)と、口臭抑制に働く因子を強化しつつ、口臭発生を助長する因子を抑制するために、唾液の質を改善することと量の問題を克服する事が、口臭治療成功へのカギである事がわかります。

次の項では、唾液の量的問題を解決する、唾液はどのようにして出るか、唾液分泌はコントロールできるか?というテーマについて書きます。